クリニックからのお知らせ

■★精神科の多剤併用薬について★
統合失調症で精神科に入院している患者の4割が、3種類以上の抗精神病薬を処方されていることがわかった。
複数の薬物による日本の治療は国際的にみても異例で、重い副作用や死亡のリスクを高める心配が
指摘されている。これまでも精神科の治療では薬漬けを指摘する声が根強くあったが、
一部の医療機関などを対象にした研究が多かった。今回の研究では、2011年度から、全レセプトデータを
提供する厚生労働省のデータベースの運用が始まったことから、精神科での詳しい薬物治療の実態の調査、
分析ができるようになった。その結果、抗精神病薬を1種類しか処方されていない患者は27%に過ぎず、
42%が3種類以上処方されていた。4種類以上でみても20%に上った。抗精神病薬には幻覚や妄想などの
症状を改善したり、不安や興奮などを鎮めたりする作用があり、患者の状態を見て最適の薬を選ぶ必要がある。
欧米の治療指針などでも、統合失調症では1種類の処方が標準的な治療とされている。3種類以上で治療効果が
上がるとの科学的な根拠がはっきりした報告はない。複数の薬を処方され服用すれば、便秘やのどの乾き、
自分の意思と関係なく出る異常運動、認知機能の低下などの副作用が出やすくなる。多剤の服用によって、
うまく飲み込めなくなり誤嚥性肺炎につながったり、心臓に負担がかかったりして、薬が1種類増えるごとに、
死亡リスクが約2倍に高まるという日本やフィンランドの研究報告もある。統合失調症などを診る精神科病院で
長年、薬漬けともいえる治療が行われてきたのは、精神科病練のスタッフ不足が一因と考えられている。
そもそも、日本では重症患者の治療が、在宅ではなく、入院に偏りがちだとの指摘がある。
近年は、患者の人権を守るほか、医療費の無駄をなくすためにも、科学的根拠のない「薬漬け」を見直そう
という動きも出ている。厚生労働省研究班は、複数の薬を処方された患者を対象に安全に薬を減らす方法を探る
臨床試験を行い、指針作りを進めている。医療の質を上げるのには、まずは見えにくい精神科治療の
実態を明らかにしなければならない。国を挙げて、薬を減らす取り組みが必要だ。

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